緑人間
すっかり日は暮れ、虫の音と蛙の歌声が庭に響いていた。仏間の明かりがまあるく庭に落ちている。
村の家々の灯りがポツポツとともっている。
山のシルエットが黒々と佇んでいる。
今日も頃合よく夕立がきて、夜の庭は涼しかった。
桃吾は縁側に座って、むっしりと濃くなった緑の匂いをかいでいた。いつもの宵だった。
群青の空をひらひらと舞うコウモリを見ていた時だった。
プチトマトと茄子の畑の向こう。ビニールハウスのわきの暗がりに、緑色に光るものがいた。
蛍光塗料のようなじわっとした緑色のそれは、人の姿をしていた。
それには目も口もなく、輪郭が緑に光っている黒い人のようなもの。
何をしているのか、ビニールハウスの横で立ったり座ったりしている。座るたびに生垣に隠れて見えなくなり、またすぐ現れる。
「おじぃ。あれ、なんかな?」
桃吾の傍らで足のツメを切っていたおじぃは、ひょいと顔を上げるとまたツメを切りながら言った。
「あれか。あれは緑人間≠竅v
「ふぅん!?」
何の説明にもなっていないが、とりあえず桃吾は納得した。あれは「緑人間」なのだと。
「じいちゃん、桃吾、飯やで」
お母が呼びにきたので、桃吾とおじぃは台所へ夕飯を食いに行った。
飯を終えて仏間へ戻ってきた時は、夜の畑に「緑人間」はいなかった。