落ち葉
桃吾は、おばぁと銀なん拾いに行った。
おばぁとっておきの場所には、一面目のさめるような黄色の絨毯が敷き詰められていた。
「すご―――っ!! まっ黄っ黄やあ―――!!」
抜けるような空の青と、木立の茶色と大地の黄色が、目に痛いぐらい鮮やかで美しくて、すっかりと深まった秋の気配を浴びるように感じる。
「銀杏の雨じゃ〜!」
桃吾は、落ち葉を腕いっぱい抱えて放り上げた。黄色の雨がわっと降り注ぐ。落ち葉は、掘っても掘っても厚く降り積っていた。
ひとしきり大はしゃぎした後は銀なん拾いだ。桃吾は手袋をはめ、幾層にも折り重なった銀杏をかき分けかき分け木の実を探したが、なかなかみつからない。
しかしおばぁはといえば、金挟みでいとも簡単にひょいひょいと銀なんをつまんでは、手押し車に放り込んでゆく。
「おばぁは、なんでそんなに簡単に拾えるんな?」
「そりゃ慣れとるで」
おばぁは笑った。
「銀なんが、ここやここや、拾うてええぞ〜と言うとるんや」
「銀なんがしゃべるんか!」
「そんな気がするだけやがの」
おばぁは、また笑った。
桃吾はおばぁに倣い、銀なんの声を聞こうと落ち葉の上にはいつくばって耳をすませてみたが、なんの声も聞こえなかった。
聞こえるのは、風の音、鳥の声、おばぁががさがさと車を押す音だけだった。
その時ふいに、ざざざと木の葉がざわめく音がした。桃吾のすぐ近くで銀杏が風に巻き上げられ、くるくると踊っていた。
そこだけ小さなつむじ風が吹いているように。
しばらくすると、銀杏の葉がごっそりと固まって持ち上がった。
黄色い葉っぱの固まりは桃吾ぐらいの背丈で、まるで一つの生き物のようにもぞもぞとうごめいた。
桃吾はびっくりしてみつめていたが、突然、パアン!! と、すごい音が鳴り響いた。そのとたん、銀杏の固まりはザッと崩れ落ちた。
おばぁが拍手を打ったのだった。細い小さなしわしわの手が打ったとは思えないほど、大きく鋭い音だった。
銀杏の森には、何事もなかったかのような静けさが戻った。どこにもつむじ風など吹いていなかった。
銀なんは、茶碗蒸と、おじぃとお父の酒のつまみになった。